こんにちは!今日は、機能安全の設計エンジニア向けに、国際標準であるIEC 62061の7.4.1を解説します。機能安全は、機械の安全関連制御システムにおいて非常に重要な概念です。まずはじめに、IEC 62061における重要な概念である、ハードウェア故障許容度(HFT)と安全側故障割合(SFF)について理解しましょう。

概要

7.4.1では、以下の内容が述べられています。

  • 安全関連制御システム(SCS)の安全性インテグリティレベル(SIL)は、ハードウェア故障耐性(HFT)と安全側故障割合(SFF)に制限される。
  • サブシステムが単一要素から成る場合、特定の要件を満たす必要がある。
  • 複数のサブシステムを組み合わせて冗長性を持つシステムを作る際、特定の手順に従う。

ハードウェア故障許容度(HFT)と安全側故障割合(SFF)

ハードウェア故障許容度(HFT)は、システムが許容できる故障の数を示しています。一方、安全側故障割合(SFF)は、システムが安全に対処される比率を示す指標です。これらの指標を理解することで、システムの安全性がどのように評価され、改善されるかがわかります。

ハードウェア故障許容度(HFT)について

ハードウェア故障許容度(HFT)は、システムが許容できる故障の数を示す指標です。N個の故障許容度がある場合、N + 1個の故障が発生すると、システムの安全機能が喪失することになります。HFTが高いほど、システムはより多くの故障に耐えられることを意味します。

安全側故障割合(SFF)について

安全側故障割合(SFF)は、システム内で発生した故障が安全に対処される比率を示す指標です。SFFが高いほど、システムは故障に対してより良い対処ができることを意味します。具体的には、SFFの値によって以下のように評価されます。(以下表6の一部抜粋)HFTが0の場合、

  • SFF < 60%: 通常は許容されませんが、特定の条件下ではSIL 1が達成可能です。
  • SFF 60% ~ 90%: SIL 1からSIL 3までの範囲で達成可能です。
  • SFF 90% ~ 99%: SIL 2からSIL 3までの範囲で達成可能です。
  • SFF ≥ 99%: SIL 3が達成可能です。

HFTとSFFがシステム設計に与える影響

HFTとSFFは、システム設計において重要な役割を果たします。システムの安全性能を向上させるためには、HFTとSFFのバランスを適切に取ることが重要です。例えば、HFTが低いシステムでは、SFFを高めることで安全性能を向上させることができます。逆に、HFTが高いシステムでは、SFFが低くても、システム全体の安全性能が確保されることがあります。

システム設計でのSIL選択

システムを設計する際には、表6に示されたアーキテクチャ制約を参考にして、HFTとSFFを考慮しながら最適なSILを選択することが重要です。これにより、システムが求められる安全性能を達成できるようになります。

  1. シングルサブシステム要素の条件:

サブシステムが単一のサブシステム要素のみで構成されている場合、SILはPFHで規定された値(表 4) を満たす必要があります。特に、HFT 0の SIL 3 のサブシステム要素については、SCS 診断機能によって 99% 以上の SFF が達成される必要があります。

  1. 複数のサブシステムを組み合わせる場合の SIL 計算:

2 つ以上の事前設計されたサブシステムを組み合わせて冗長なサブシステムを構築する場合、組み合わせたサブシステム全体の SIL を計算する必要があります。これは、最も高い SIL のサブシステムを基準にして、表 6 の HFT 0 列で対応する SIL を探すことで行えます。これにより、適用可能な SFF 範囲が得られます。組み合わせたサブシステムの SIL は、同じ SFF 範囲で HFT を 1 つ増やすことで導出されます。

冗長性を持たせたシステム設計

冗長性を持たせたシステム設計を検討する場合には、複数のサブシステムを組み合わせることで、全体の安全性を向上させることができます。組み合わせたサブシステムの最大SILは、最も高いSILを持つサブシステムに基づいて決定されるため、異なるサブシステムを効果的に組み合わせることで、より高い安全性能を実現できます。

まとめ

今回の解説では、IEC 62061の7.4.1について説明しました。機械の安全関連制御システムにおける機能安全を確保するために、HFTとSFFを理解し、最適なSILを選択することが重要です。また、冗長性を持たせたシステム設計により、安全性能をさらに向上させることが可能です。

これからも機能安全に関連する様々なトピックを取り上げていきますので、ぜひ引き続きブログをチェックしてください!

それでは、次回の記事でお会いしましょう!